くぐもった音の直し方:シグナルチェーンを順番に直す

要約

くぐもった音の直し方はシグナルチェーンの設定確認から始まる。OBSのビットレートをデフォルトの160kbpsから320kbpsへ上げ、インターフェース・OS・OBSのサンプルレートを48kHzに統一し、200〜500Hzのマッドゾーンをナローカットで処理、ノイズ抑制とAGCをオフにする。EQでの修正はその後に行う。

くぐもった音を修正するためのスタジオマイクとオーディオ波形の可視化

くぐもった音の直し方はシグナルチェーンにある。機材の問題ではなく、設定の問題がほとんどだ。原因のほとんどは200〜500Hzの周波数が溜まること、サンプルレートのズレ、それかノイズ抑制が効きすぎること。マイクからマスターまで順番に確認して、詰まっている箇所を一つずつ潰す。

200〜500Hzがくぐもりの震源地

あらゆる音源は全周波数帯にエネルギーを持つ。問題は200〜500Hzで起きる。キックのロー、ベースギターの基音、部屋の反射、ボーカルの胸声、ギターのボディ共鳴がこの帯域に集中する。複数の音源が重なると、ミックスはのっぺりして隣の部屋から聴いているような音になる。

これがマッドゾーンだ。思い込みでも、感覚でもない。くぐもった音がするなら、まずここから確認する。

EQのナローバンドをQを高くして200〜500Hzの範囲でスイープする。一番ひどく聴こえる周波数を見つけたら、3〜6dBカットする。マスターバスではなく、一番主張している楽器かボーカルトラックから始める。

原則はひとつ:ローミッドを支配する楽器を一つ決める。ベースギターを軸にするなら、ギター、シンセ、ボーカルの250Hzを削って、ベースだけ触らない。音像がくっきりして、重さは失わない。

DAWでEQ設定を操作するオーディオエンジニア

マイクの距離・向きが間違っている

近接効果は本物だ。カーディオイドマイクを音源から15cm以内に置くと、低音が急激にブーストされる。録音セッションなら「温かみ」で済むが、部屋の響きを考慮しないままストリームに使うとくぐもった音になる。

コンデンサーマイクで声やボーカルを録るときの基本:マイクから15〜20cm離れ、カプセルの正面ではなくわずかにオフアクシスで向く。ポップフィルターを使うなら、フィルターに口を押しつけるのではなくマイクをその後ろに置く。

配信セットアップでは角度が距離と同じくらい重要だ。マイクをデスク側に傾けると、ファンノイズや部屋の反射を先に拾う。カプセルは顎の高さの口に向ける。上からでも下からでもなく。

オーディオインターフェースのインプットレベルを確認する。最も音量が大きい瞬間に-12〜-6dBFSでピークしているのが理想だ。-20dBFSを下回ると、ポスト処理でブーストしたときに薄くてくぐもった音になる。

OBSが音を静かに壊している

TwitchやKickで配信していて、VODがヘッドホンで聴く音よりくぐもって聴こえるなら、まずOBSの設定を確認する。ほぼ確実にここが原因だ。

OBSのデフォルトのオーディオビットレートは160kbpsだ。これでは足りない。ステレオ配信なら320kbpsに上げる。設定 > 出力 > 音声からオーディオビットレートを変更する。配信音質への影響が最も大きいのはこの一点だ。

次はサンプルレートのズレだ。OBSのデフォルトは48kHz、でもオーディオインターフェースが44.1kHz(CDの規格)になっていることがある。逆のパターンもある。一致しない場合、OBSはリアルタイム変換を行い音質が劣化する。インターフェース、WindowsまたはmacOSのサウンド設定、OBSを全て同じサンプルレートに揃える。48kHzが放送標準だ。

自動ゲインコントロール(AGC)が現れる全ての場所でオフにする。AGCはゲインを自動で上下させて音量を正規化する。配信ではこれがポンピングアーティファクトを生む。OBS、Discordのボイスとビデオ設定、Windowsサウンド設定でオフにする。

オーディオインターフェースとヘッドホンを使った配信デスクのセットアップ

ノイズ抑制が高音を削っている

ノイズ抑制はある閾値以下のバックグラウンド音を除去するためのものだ。問題はAIベースのノイズ抑制が、いらないキーボード音と声の存在感を作る上倍音を区別できないことにある。

OBSの組み込みノイズ抑制フィルターはデフォルトでRNNoiseを使う。機能するが、ノイズ以外も削る。配信中の声が電話越しのように聴こえるなら、このフィルターが原因の可能性が高い。

テストする方法:フィルターをオフにしたシーンを用意する。テスト配信をする。聴き返す。フィルターなしで明らかに声がはっきりするなら、選択肢は二つ。フィルターを外してマイクの配置と吸音処理でバックグラウンドノイズに対処するか、より軽いデノイズアプローチに切り替えるか。

Discordでは、ボイスとビデオでノイズ抑制を「なし」か最低設定にする。エコーキャンセレーションもオフにする。この二つが組み合わさると、録音した声が水中から聴こえるようになる。

録音中にZoom、Teams、その他の通話アプリが起動していれば同じことが起きる。これらのアプリはDAWで録音中でもオーディオ入力にグローバルで処理をかける。録音前は閉じる。

サンプルレートのズレは気づきにくい

サンプルレートのズレは微妙だ。音が途切れるわけでも、明らかなアーティファクトが出るわけでもない。ただ音が鈍くなる。かけてもいないローパスフィルターで上を削られた感じがする。

44.1kHzの音声を48kHzを前提とするシステムで再生すると、ピッチがわずかにズレて周波数特性が劣化する。原因を知らない人のほとんどがくぐもった音と感じる。

修正は全チェーンを一つのサンプルレートに統一することだ。この順で確認する:

配信プラットフォーム向けに音楽を制作するなら、48kHzが安全な標準だ。Twitch、YouTube、Spotifyは内部で48kHzに正規化する。44.1kHzからスタートすると、自分でコントロールできない変換が一工程増える。

EQで直す方法

録音が終わっていて、ポストでくぐもった音を直す必要がある場合。EQのサージカルな処理が必要になる。

ボーカルには80HzでハイパスフィルターHPFを入れる。低域のないアコースティックサウンドには100Hzで。これで部屋では気づかなかったルンブル、空調ノイズ、床の振動をカットする。12dB/オクターブ以上のロールオフで。

次にマッドスイープ:Q4〜6のナローベルカーブを6〜9dBブーストして、150Hzから600Hzをゆっくりスイープする。最も悪く聴こえる周波数を見つけたら、カットに切り替えて3〜6dB削る。この一手が、他のどのアクションよりもくぐもった録音をクリアにする。

プレゼンスには3kHzからのハイシェルフブーストを追加する。2〜4dBブースト。硬さを出さずにクリアさが戻る。ブースト後に硬く聴こえたら、1dBずつ戻す。

エアリーな質感には10kHz付近に控えめなブースト(1〜2dB、ワイドQ)を入れる。オープンで生々しい、本物のスペースで収録したような音になる。

吸音処理で根本解決

完全にトリートメントされた部屋は問題を源で止める。プロの環境は必要ない。

多くのベッドルームスタジオで最初に問題になるのはアーリーリフレクションだ。声が後ろや横の壁に当たり、ダイレクトサウンドの5〜20ミリ秒後にマイクに返ってくる。コムフィルタリング効果でこもった、箱っぽい音になる。

実際的な修正:マイクの後ろと横に厚い毛布、引越し用パッド、または吸音パネルを置く。部屋を防音するのではない。マイクが向く面からのアーリーリフレクションを減らすことが目的だ。

配信デスクなら、マイクの後ろに取り付けるリフレクションフィルターが最も重要な反射経路を処理してくれる。部屋全体のトリートメントを置き換えるわけではない。

見落とされがちなアプローチ:部屋の角でマイクを壁から離して録音する。部屋の角は低音エネルギーを集めるが、角に位置することで背後の壁がマイクから遠ざかる。最も近い平らな反射面との間に距離ができる。

シグナルチェーンを辿って修正する

くぐもった音はほぼ確実に一つの問題ではない。サンプルレートのズレで鈍くなり、ノイズ抑制が上を削り、マッドゾーンの溜まりがミックス全体をのっぺりさせる。複数の問題が重なっているのが普通だ。

この順番で直す:サンプルレートが最初、ノイズ抑制が二番目、物理的な配置が三番目、EQは最後。設定を確認する前にEQに手を伸ばすな。修正の大半はプラグインを開く前に終わる。

専用オーディオインターフェースで配信していて、上を全部確認した後もくぐもっているなら、マイクのカプセルが傷んでいるか埃が詰まっている可能性がある。グリルをソフトブラシで掃除してファンタム電源を入れ直すだけで、永久に壊れたと思っていたマイクが戻ることがある。

シグナルチェーンをシグナルチェーンとして扱う。ソースから始めてアウトプットに向かう。詰まる場所ごとに違う種類の悪い音が出る。くぐもった音が具体的に示すのは、高域がブロックされているか、ローミッドがブーストされているか、ソフトウェアの干渉だ。全部解決できる。

よくある質問

くぐもった音の一番多い原因は何ですか?
200〜500Hzの周波数が複数の音源で重なるマッドゾーンの溜まりが最も多い原因です。EQでQを高くしてナローカットして確認してください。
OBSの音がくぐもって聴こえる場合はどう直しますか?
まずビットレートを160kbpsから320kbpsに上げてください。次にOBS、オーディオインターフェース、OSのサンプルレートを全て48kHzに統一します。AGCもオフにしてください。
ノイズ抑制フィルターはオフにした方がいいですか?
声がくぐもって聴こえるなら、まずフィルターをオフにしてテスト配信してください。フィルターなしで声がはっきりするなら、マイク配置と吸音処理でバックグラウンドノイズに対処する方が良い結果になります。
マイクの適切な距離と入力レベルは?
コンデンサーマイクの場合、音源から15〜20cm離れてわずかにオフアクシスで向けるのが基本です。インプットレベルは最大音量で-12〜-6dBFSを目標にしてください。
EQでくぐもった音を直す手順を教えてください。
ボーカルには80HzのHPFを入れてルンブルをカット。次にQ4〜6のナローベルを6〜9dBブーストして150〜600Hzをスイープし、最悪の周波数を3〜6dBカット。最後に3kHzからのハイシェルフを2〜4dBブーストしてプレゼンスを戻します。